股旅名曲集

島津亜矢( 島津亞矢 ) 股旅名曲集歌詞
1.関の弥太っぺ(セリフ入り)

作詞:宮沢守夫
作曲:村沢良介

義理の重たさ 背にしょって
流れ道中 子連れ旅
一夜泊りの 草鞋をぬぐも
なにかのご縁
無理を承知で たのみます
どうか どうか どうかこの子の
親がわり

「手前‥呼び名は関の弥太っぺと申します おかみさん
理由は聞かずにこの子を預かっちゃもらえませんか
きっと迎えに参ります 喧嘩渡世のこの身では
幼な子を刃くぐりの巻き添えには出来ません
身勝手なお願いではござんすがよろしゅうお頼申します」

昇る朝日に 手を合わせ
沈む夕日に また祈る
無事でいるやら 辛くはないか
しあわせなのか
気にはしてたが 長の旅
やっと やっと やっと戻りの
甲州路

「早いもんだなァ‥あれから七年 逢ってむかし話をしたら
あの子に悲しい思いをさせるだけだ‥
云いたい事も聞きたい事も山ほどある
逢えば泣けて来てなにも云えないだろう
ただ一目だけ大きくなったお小夜を見たら
土産に買ったこのかんざしを置いて立ち去ろう
それでいゝ それでいゝ それだけでいゝんだ‥」

可愛いがられて 育てられ
嫁に行く日も 近いとか
どんな親でも 命をわけた
親なら子なら
せめても一度 逢いたかろう
関の 関の 関の弥太っぺ
男泣き


2.勘太郎月夜唄

作詞:佐伯孝夫
作曲:清水保雄

影か柳か 勘太郎さんか
伊那は七谷(ななたに) 糸ひく煙り
棄てて別れた 故郷の月に
しのぶ今宵の ほととぎす

「広い世間をななめに渡る
馬鹿な旅笠詰め合羽
堪忍しておくんなさい
やくざはやくざらしく
心にだけは
絹のさらしを 巻いております」

形(なり)はやくざに やつれていても
月よ見てくれ 心の錦
生まれ変って 天竜の水に
うつす男の 晴姿

菊は栄える 葵は枯れる
桑を摘む頃 逢おうじゃないか
霧に消えゆく 一本刀
泣いて見送る 紅つつじ


3.沓掛時次郎(セリフ入り)


4.大利根月夜

作詞:藤田まさと
作曲:長津義司

「あゝ鐘が鳴る
あれは生命(いのち)の送り鐘か
今宵は八月十三夜(や)
抜いちゃいけねえ
義理が絡んだ白刃を抜けば
利根が三途の川になる」

あれを御覧と 指差す方に
利根の流れを ながれ月
昔笑うて ながめた月も
今日は 今日は涙の 顔で見る

「侍がなんだ やくざがどうした
人が住む世の裏街道
命ひとつを手土産に
ここまで落ちた平手造酒
いいってことよ
どんなに愚痴ってみても
昔にかえる 風は吹かねえって
ことなんだ」

愚痴じゃないけれど 世が世であれば
殿のまねきの 月見酒
男 平手と もてはやされて
今じゃ 今じゃ浮世を 三度笠

もとをたゞせば 侍育ち
腕は自慢の 千葉仕込み
何が不足で 大利根ぐらし
故郷(くに)じゃ故郷じゃ妹が 待つものを


5.旅笠道中

作詞:藤田まさと
作曲:大村能章

「人間 おぎゃアと生まれて思う様に
生きられる者は
一体何人おりましょう
上を見ればきりがない
下を見れば我慢もできる
近道なんかするよりもせめて
おのれの心に嘘をつかず
生きてみたいと思います」

夜が冷たい 心が寒い
渡り鳥かよ 俺等の旅は
風のまにまに 吹きさらし

風が変れば 俺等も変る
仁義双六 丁半かけて
渡るやくざの たよりなさ

「明日がない
夢がないと仰るんですかい
そりゃ一寸先は闇の浮世と云いますが
ごらんなさい道端の
名もない小さな花でさえ
春が来りゃぁ世に出ます
この人間界(うきよ) まんざら捨てたもんじゃ
ございませんぜ」

亭主もつなら 堅気をおもち
とかくやくざは 苦労の種よ
恋も人情も 旅の空


6.赤城の子守唄


7.お俊恋唄

作詞:吉川静夫
作曲:佐々木俊一

「女は恋に生きるもの
憎らしいねぇ 新太郎さんは
夢まで見させて
女ごころを掴んでおいて
今は何処かの空の下
だっ嫌いだよ 旅鴉なんか」

忍び泣きして からだもやせて
結ぶ帯にも 女の泪
こんなわたしに したまま気まま
旅に出た人 旅に 旅に
旅に出た人 恨みはせぬが
思いすごしか 茶碗酒

ぬれた枕に 頬すり寄せて
呼んですがって 両手を合わせ
夢になりとも 逢いたいものと
泣けば雨風 泣けば 泣けば
泣けば雨風 夜明けのからす
女泣かせの 鐘がなる

「おんな心は情けの小枝
とまれば夜露もしのげるものを
それはどうして あの人には
判ってもらえないンだろうねぇ」

神にねがいを 新太郎さんに
茶だち塩だち お百度詣り
またの逢う瀬を 命にかけて
待ってこがれて 待って 待って
待ってこがれて 五年はおろか
柳新芽の 枯れるまで


8.渡り鳥仁義

作詞:たかたかし
作曲:市川昭介

夜の酒場の 赤い灯が
俺にゃ似合いの ひとり酒
ごめんなすって 俺らすねに傷もつ
浮世双六 渡り鳥
後ろ髪ひく 後ろ髪ひく
ああ流し唄

可愛いあの娘の つぐ酒に
ホロリこぼした ひとしずく
ごめんなすって 俺ら色の出入りが
いまだイロハの 未熟者
無理はいうなよ 無理はいうなよ
ああ泣きぼくろ

雲よおまえは どこへ行く
伊豆か越後か ふるさとか
ごめんなすって 俺らはじき出されて
意地がひとつの 裏街道
背中に冷たい 背中に冷たい
ああ初しぐれ


9.鴛鴦道中

作詞:藤田まさと
作曲:阿部武雄

「可笑(おか)しいねえ
年も違えば故郷も違う
もとは他人の男と女が
今では夫婦(めおと) 鴛鴦ぐらし
お前さん寒くはないかい
それとも想い出しているのかい
ふるさとをさ」

堅気育ちも 重なる旅に
いつか外れて 無宿者
知らぬ他国の たそがれ時は
俺も泣きたい ことばかり

染まぬ縁談(はなし)に 故郷をとんで
娘ざかりを 茶屋ぐらし
茶碗酒なら 負けないけれど
人情からめば もろくなる

「あんなやくざみたいな男の
どこがよくって惚れたのさって
世間の人は嗤うけれど
お前さんのホントの値打ちは
この私が一番よく知っているのさ
お前さんだったら
一緒に死ねるもんねえ」

かたちばかりの おしどり姿
ならぶ草鞋(わらじ)に 風が吹く
浮世あぶれた やくざな旅は
どこで散るやら 果てるやら

泣くも笑うも ふところ次第
もとでなくした その時は
遠慮いらずの 女房じゃないか
丁とはりゃんせ わしが身を


10.一本刀土俵入り(セリフ入り)

作詞:高月ことば
作曲:村沢良介

男度胸の 人生を
土俵ひとすじ 生きてゆく
おれは角力の 鬼になる
想い出すまい 故郷のことは
晴れて錦を 飾るまで

「姐さん…わしはあんたのような親切な人に出逢った
のは生まれて初めてだ 姐さんのご恩を忘れぬため
に わしが出世して幕内に入ろうが三役になろうが
横綱を張るまでは どんな事があっても
駒形茂兵エで押し通します」

利根の川風 身に沁みて
つくり笑いの 日を送る
繻子のだるまは 七転び
八起き浮世も 捨てばちなれど
花の情けは まだ枯れぬ

「お鳶さん…達者で何よりでござんした
十年前は一方ならねえ お世話になって… あの時
約束したように大手を振って姐さんの前に出られた
義理じゃござんせんが一目だけでも 無事な姿を見た
上で お礼の言葉を云いてえと恥をしのんで尋ねて
まいりやした… 姐さん…想い出しておくんなすっ
たか十年前の取手の宿のあびこやで くし かんざ
しに きんちゃくぐるみ恵んで貰った姐さんに
見ていただく これが駒形茂兵エの しがねえ姿の
しがねえ姿の…土俵入りでござんす」

化粧まわしは 夢の夢
今は素袷 三度笠
西に東に 渡り鳥
誰に見せよか 駒形茂兵エ
一本刀の 土俵入り


11.名月赤城山

作詞:矢島寵児
作曲:菊地博

男ごころに 男が惚れて
意気がとけ合う 赤城山
澄んだ夜空の まんまる月に
浮世横笛 誰が吹く

「赤城の山も今夜を限り
生まれ故郷の国定の
村や 縄張りを捨て国を捨て
可愛い乾分(こぶん)の
手前ぇたちとも
わかれわかれになる首途だ」

意地の筋金 度胸のよさも
いつか落目の 三度笠
云われまいぞえ やくざの果てと
さとるわらじに 散る落葉

「加賀の国の住人
小松五郎義兼が鍛えた業物
万年溜の雪水に浄めて
俺には生涯ぇ手前ぇと
いう強ぇ味方があったのだ」

渡る雁がね 乱れてないて
明日はいずこの ねぐらやら
心しみじみ 吹く横笛に
またも騒ぐか 夜半の風


12.旅姿三人男

作詞:宮本旅人
作曲:鈴木哲夫

清水港の 名物は
お茶の香りと 男伊達
見たか聞いたか あの啖呵(たんか)
粋な小政の 粋な小政の
旅姿

富士の高嶺の 白雪が
溶けて流れる 真清水(ましみず)で
男磨いた 勇み肌
なんで大政 なんで大政
国を売る

腕と度胸じゃ 負けないが
人情からめば ついほろり
見えぬ片眼に 出る涙
森の石松 森の石松
よい男


13.妻恋道中

作詞:藤田まさと
作曲:阿部武雄

「堅気嫌ってやくざになって
野暮は承知の喧嘩沙汰
飽きも飽かれもしねぇ夫婦(みょうと)の仲も
俺ァこの脇差(どす)で切ってしまったんだ
馬鹿は死んでも なおらねえ」

好いた女房に 三下(みくだ)り半を
投げて長脇差(ながどす) 永の旅
怨むまいぞえ 俺等のことは
またの浮世で 逢うまでは

惚れていながら 惚れない素振り
それがやくざの 恋とやら
二度と添うまい 街道がらす
阿呆阿呆で 旅ぐらし

「意地を通すか人情(なさけ)をとるか
二つに一つの返答は
男なりゃこそ胸のうち
どうせこの世は一天地六(いってんちろく)
出たとこ勝負と賽の目ふれば
お釈迦様さえ横をむく」

泣いてなるかと 心に誓や
誓う矢先に またほろり
馬鹿を承知の 俺等の胸を
何故に泣かすか 今朝の風


14.浪曲渡り鳥


15.後追い三味線

作詞:吉川静夫
作曲:吉田正

「負けるものかと云いながら
あの人だけには泣かされました
男ぎらいの金看板を
女ぎらいにはずされて
弱い女になりました」

後を追うなと 薄情がらす
闇にひと声 月夜に三声
すがりつかせぬ 道中合羽
糸も切れそな 三味線抱いて
泣いてまた越す おんな坂

末はこうよと 承知のはずが
惚れた弱味の この未練酒
酔えば恋しさ 悲しさつのる
可愛いがられた むかしはむかし
いまは涙の 流れ島

帯も結ばず 黒髪とかず
逢えぬ日数を 指折るばかり
神も仏も この世になけりゃ
合わしますまい この両の手を
三味も知らない おんな旅


16.大利根無情

作詞:猪又良
作曲:長津義司

利根の利根の川風 よしきりの
声が冷たく 身をせめる
これが浮世か
見てはいけない 西空見れば
江戸へ江戸へひと刷毛 あかね雲

「佐原囃子が聴えてくらあ想い出すなア…、
御玉ヶ池の千葉道場か、うふ…。
平手造酒も、今じゃやくざの用心棒、
人生裏街道の枯落葉か。」

義理の義理の夜風に さらされて
月よお前も 泣きたかろ
こゝろみだれて
抜いたすすきを 奥歯で噛んだ
男男泪の 落し差し

「止めて下さるな、妙心殿。
落ちぶれ果てゝも 平手は武士じゃ
男の散りぎわは知って居り申す、
行かねばならぬそこをどいて下され、
行かねばならぬのだ。」

瞼瞼ぬらして 大利根の
水に流した 夢いくつ
息をころして
地獄まいりの 冷酒のめば
鐘が鐘が鳴る鳴る 妙円寺


17.流転

作詞:藤田まさと
作曲:阿部武雄

「この裏通りは
どこまで続いているのかと
伺いましたら
あの世までだと
世間さまが教えてくれました」

男命を みすじの糸に
かけて三七(さんしち) 二十一目(さいのめ)くずれ
浮世かるたの 浮世かるたの
浮沈み

どうせ一度は あの世とやらへ
落ちて流れて 行く身じゃないか
鳴くな夜明けの 鳴くな夜明けの
渡り鳥

「お袋さんから
せっかく貰った五尺の身体(からだ)も
いつか崩れて三味線やくざ
とんだバチ当りでござんすが
男の意地と あったけえ
涙の一粒ぐれえは 大事に
持っていてえもんでございます」

意地は男よ 情は女子
ままになるなら 男を捨てて
俺も生きたや 俺も生きたや
恋のため


18.瞼の母(セリフ入り)

作詞:坂口ふみ緒
作曲:沢しげと

軒下三寸 借りうけまして
申しあげます おっ母さん
たった一言 忠太郎と
呼んでくだせぇ
呼んでくだせぇ たのみやす

「おかみさん 今何とか言いなすったね
親子の名のりがしたかったら
堅気の姿で尋ねて来いと言いなすったが
笑わしちゃいけねぇぜ
親にはぐれた子雀が
ぐれたを叱るは無理な話よ
愚痴じゃねぇ 未練じゃねぇ
おかみさん 俺の言うことを
よく聞きなせぇ
尋ね 尋ねた母親に
倅と呼んでもらえぬような
こんなやくざに 誰がしたんでぇ」

世間の噂が 気になるならば
こんなやくざを なぜ生んだ
つれのうござんす おっ母さん
月も雲間で
月も雲間で もらい泣き

「何を言ってやんでぇ
何が今更、 忠太郎だ 何が倅でぇ
俺らにゃおっ母はいねぇんでぇ
おっ母さんは 俺の心の底に居るんだ
上と下との瞼を合わせりゃ
逢わねぇ昔の
やさしいおっ母の面影が浮かんでくらぁ
逢いたくなったら
逢いたくなったら 俺ァ瞼をつむるんだ」

逢わなきゃよかった 泣かずにすんだ
これが浮世と いうものか
水熊横丁は 遠灯り
縞の合羽に
縞の合羽に 雪が散る

おっ母さん